ヴェネツィアでの3日目は、朝から霧がかかっていて辺りの様子がはっきり
見えないほどだった。サン・マルコ広場に近い乗り場からヴァポレットに乗り、
一路リアルト橋をめざした。
着いてみるとリアルト橋の半分ほどが霞んでいるような状態で、霧は一向に
晴れる気配がないようだ。「ワインの岸辺」と呼ばれている運河沿いの道を
いくと、それぞれの店先でテーブルや椅子の準備をしたり、岸付けされた船
から品物を運び入れる人の姿が活気を帯びてみえた。
岸辺から北に抜ける小さな路地を巡ってみると、通路にせり出した隊商宿の
建物などが続き、その昔アフリカやイスラームの世界から交易で訪れていた
人たちの名残をとどめている一角をみた。
リアルト市場は、当時ヴェネツィアの中心にあって、経済活動をいってに担っ
ていた一大拠点として、ヨーロッパにも影響を及ぼすほどであったという。サン・
ジャコモ教会の建物や時計などにもそれが偲ばれる。回廊が市場を取り囲む
ように造られていて、手形交換所や両替所(現在の銀行)などの事務所がその中に
立ち並び、大層な繁栄をもたらしていたようだ。そんな歴史を今に伝える広場で
描いてみた、その日の一枚目だ。








   2008.10.09.  F8   
オリオン・ソフトウーブ水彩紙
   ペン  透明水彩

リアルト市場の面影(サン・ジャコモ教会)