地形とか地勢とかに余り関心を持たないでと云うか,
意識しないで描いていたが,ある方の話を聞いて,
なるほどと気がついたことがある。
十数年前,いや実際には,もっと以前に,その土地は,
一続きの丘のような所であったに違いないが,都市化
の影響で,その丘の麓から道が縦断して造られたことで,
丘が二つに分断されてしまった。
それから暫らく時間が経過して,昔の姿を知らない者が,
その道を上がって行くと,森のような木々の繋がりが,
道を挟んで両側に広がっているのを見るだろう。
果たして,その人は,昔,この森は一つの場所であった
ことに気づくだろうか。おそらくそんなことには,関心を
持たずに通り過ぎてしまうのではないか。
丘や森の姿は,人間によって変えられてしまっても,以前
は,そこら一体が一続きの丘であったり森であった痕跡
は,今でも気をつけてみれば,どこかに残っている。
昔の東京の姿を忍ばせてくれるような,ホッとするような
場所が今でも確実に残っている。
そこは,人に知られずに時を過ごしてきたかのような所
だ。絵に描いたここも,そんな場所の一つではないか。


13.JUN.2011    P6
  ダーマートグラフ
 透明水彩  画用紙

緑と映り