水彩画への入門-2-  
        キミ子方式 全国合宿研究大会資      
            1999.8.6.〜8.8  東京・上野                              
    
風景・建物の絵を描く
1.風景画の基本は「空」の絵         

  
ひさしぶりの大会参加です。今回は,「風景・建物の絵を描く」人のお手伝いが,少しでもできればいい

 なと思っています。でも,建物の絵も,風景画も,実は,あまりきちんと習った覚えがないのです。こんな,

 ちょっと怪しげなことを言っていて,参加者の方には,スミマセンが……

  キミ子方式では,基本のモデルになっている「モヤシ,いか,毛糸の帽子」が一通り描けるようになる

 ことが入門期にあたります。さらに植物,動物,人工物のモデルの順に,いくつかのモデルを描いていく

 中で,「桜の木」や「サバ」「動く人」「ブリキのバケツ」「空」などの作品が出来上がって行きます。このあ

 たりが中級でしょうか。


でも,目の前に広がる風景を前にすると,あれもこれも入れて描きたくなります。あとで,もうちょつと,

省いておけば良かったと,後悔することが,何回もありました。そこで,野外にあるもの・風景の中で

何をメインにして描くのか、何と何を組み合わせて描くか,ということが,問題になります。 
 

 そして,そうした「ひとつひとつのものが,しっかり描けるようになって自信をつけた」人に,「たくさんの

  ものの集合体である風景」に挑戦してもらうという道筋になっているようです。
 
               (『宇宙のものみんな描いちゃおう』松本キミ子著 P.146「建物から空まで」参照)


  
 
 それでは,風景画は中級や上級にならないと始められないのかというと,

 そうでもないようです。 「空」が描けるようになって,何かもう一つ花や木

 がそろえば,それで立派な風景画になります。  




       

   勝浦・川津港(千葉)                   
                                    
「風景画とは,野外にある目に見えるものを描いた絵」のこと,だから,「だれでも,どこでも見られる

身近なもの」として,「空の絵」を基本にしようということのようです。ですから,もっとも取り組みやす

い風景画として,画面に空をひろびろといれて描く「空の絵」が,あるわけです。また,キミ子さんは,

「野外にあるものがひとつでもはいったら風景画といえる」とも書かれています。

                                              (前掲書 P.158)


2.視点になるものがテーマになる


                   
「空の下になにかを組み合わせたら,空がテーマだし,木を描いてから

  空を組み合わせたら,テーマは木」「さきに描くもの,視点になるものが、

  その絵のテーマになる」ということだそうです。 
  


      安曇野わさび田

 何をテーマ(メイン)にしたいかというのは,絵を書く人自身が決めればいいと言うわけですから,

 風景を前にして多いに悩んでしまいます。できれば全部をそっくりそのまま描きたいと思うからです。

 でも,自分の技術や体力,時間のことも考えなければいけません。そこで,何を残し何を捨てる(省く)

 かという事を考えながら描いていくわけです。しかし,実際は,これが意外にむずかしいと思います。








 
                 
そうした,風景画のテーマの一つとして「建物」を取り上げて描くとしたら,

  どんなことに気をつけたらいいのでしょうか。また,「造られてきた順序がはっ

  きり分かる建物,または,歴史的な建物(お寺とか神社)」も,良いモデルになる

  ようです。




 日本近代文学館

      

 3.「風景・建物」の絵を楽しもう  ―― ぼくの場合 ――
  
  
ボクが「キミ子方式」に出会ったのは,今から17年前。キミ子方式のことは,『三原色の絵の具箱』シリ

 ーズで知っていたが,その夏の大会に参加してみようと思い立った。どうせ,四国の屋島まで行くなら,

 ついでに四国めぐりもしてこようと車を走らせた。

 大会では,モヤシ,イカ,毛糸の帽子を教えてもらった。絵の具箱の本に出ていたような絵が自分にも

 かけたことに感激した。
                      
                      気をよくしたボクは,勢い余って,葉書絵にも挑戦したいと申し出たが,

 「毛糸の帽子を描いてないなら,やっぱり基本だからやったほうがいいです

 よ」と,あっさり断られてしまった。夏休みの絵葉書にちょうどいいと考えて

 いたものだから,がっかり。   



    深浦・千畳敷(青森)


                      それでも,どうしても絵葉書を描きたくて,その夜泊まったビジネス

      ホテルの部屋で,見よう見真似で描いたのが,左の絵だ。






屋島で拾った!       


  その興奮状態に突き動かされて,次の日は高知の宇佐港の海岸で,

  海の絵を描いた。

  とても,暑い日で,缶ビール片手に飲みながら,3時間ぐらいかかった

  のを覚えている。 これが,中学生以来,はじめて描いた風景画だった。
    
    宇佐港付近(高知)



                     次の年も,長野の全国大会に参加した。このときは,念願の葉書絵を

     描くことができた。宿舎の庭に咲いている名前も良くわからない高山植物を

     モデルにして描いたが,枠を当ててカットすると,手作りの絵葉書ができ上

     がった。 ところが,2日目。「野外に出て描く」というのに参加して,風景画

     の難しさを思い知らされた。手前に見えるニッコウキスゲなどの高山植物の

                  細部を丹念に描きすぎて,その先その先と草原を増やしていくうちに,

 
 蝶々深山(長野蓼科)       画面の真中に来る頃に,うんざりしてしまったのだ。
  

  「人間は疲れる動物である」というキミ子さんの言葉を,思い出すこともできないぐらい,その時は熱中

 していたのだ。手前の山の形を何とか塗り終わって,ようやく絵らしくなった。曇り空をいれてでき上がり。

 正直言って,とうぶん,風景はやりたくない気分だった。

 そのあとも,家の近くの多摩湖に通い,「多摩湖の取水塔」を描いたり,宮城の鬼首で見た「紅葉の山」

 を描いたりしてきたが,だんだん,風景画について,いろいろ疑問が出てくるようになってしまった。

  要するに,もうちょっと,気楽に描けたらいいのにということだ。前から細かく描くことが好きだったのだ

 が,「ウイスキーの瓶」や「植物」などのような一つのものとは違って,風景画を,その調子で書くと,とっ

 ても疲れてしまうのである。

  近代文学館のような建物を描いた時にも,一つ一つの細部にこだわってしまって,でき上がったものは、

 それなりに達成感はあるもののとにかく,疲れてしまう。

  どうすれば,もっと気楽に楽しく,短時間で,気に入ったような絵が描けるか,そういうことを考えるよう

 になった。

       

4.風景をスケッチする・彩色する

  
50才を過ぎて目も悪くなり,体も,あちこち調子がおかしくなってきたボクの,手抜き「風景画の描き方」

 を紹介します。

  (1)  まず,画用紙は小さなモノを使う。  → 大きいと時間がかかるし疲れる。
                           
         小さ目のスケッチブック。 
                
  (2)  エンピツ(3Bぐらい)又は       → サインペンは描きなおしをしないので,

      油性サインペン(0.5か1.0ぐらい)     あきらめがつきやすい

  (3) 筆は,「水筆ペン」を使う        → バケツ,パレット,雑巾などの荷物が少なく便利

  (4) 絵の具は,固形の透明水彩絵の具  →「水筆ペン」が使いやすい発色が鮮やか。

     携帯用にセットになっている

  (5) 旅行になるべく出かける        → 新鮮な風景に出会える

                             温泉があれば最高。                                             

  (3)と(4)は,ボクの友達のIMさんから,教えていただいたことです

    
   あと,キミ子方式の原則をはみだしてしまっているかなーと思うのですが,次のようなことも,

  考えながらやっています。

    @   なるべく人物を入れて描く(ボクは,人物を描くのが苦手)

    A   海や川,湖,池など,水のある風景をテーマにする

                 (水の色や変化がおもしろいから) 

    B   筆ぺん,エンピツ,クーピー,水彩色鉛筆,油性ペン,水性ボール

      奥多摩川上流           ペンなどいろいろな画材を使ってみる  
                                     (自分にあった画材をさがしたい)
   
 C   彩色は,なるべく薄くぬる。(ボクは,どうしても濃く塗ってしまうクセがある)

 D   発色の良い絵の具や,紙をつかう(なるべく明るい感じの絵が描きたいから)

 E  描きたいものから先に描く(山とか橋など)
                                          

 



  



  
蓼科山(長野)       森山渡船場からの多摩橋(秋川市)

 さて,気楽にたのしく,風景画をこれからも楽しみたいです。


   
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